読売新聞「ごみ漂流」

e小金井市議会で渡辺大三市議が紹介している、『読売新聞』東京版の「ごみ漂流」というシリーズ記事、面白そう。
ごみ漂流 : 企画・連載 : 東京23区 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

魚拓がとれないのでペーストします。

自前処理場 小金井の難題
【写真】2007年3月末に廃止された二枚橋ごみ処理場(二枚橋衛生組合提供)。敷地は小金井、調布、府中の3市にまたがる
 「スタートラインに立てた」。あと1か月余で新処理場の建設地として二枚橋処理場(2007年3月に運転停止)の跡地取得にめどをつけなければならない小金井市の幹部は、胸をなで下ろした。
 約1・1ヘクタールの跡地は、処理場を運営してきた二枚橋衛生組合の小金井、調布、府中の構成3市が等分するが、3市議会での組合解散の手続きが遅れ、本格的な取得交渉にも入れなかった。それが、府中、小金井に続き、25日、調布市議会でもようやく、3月末の組合解散を決めたのだ。
 だが、別の新処理場を自市内に建設する調布市は「市域に2か所の焼却場は必要ない」(長友貴樹市長)として割り当て分の売却を拒む考えを変えていない。
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 跡地分割の線引きでも、3市の協議は難航した。
 昨年10月9日夜、新宿の都庁第1庁舎25階会議室。異例の調整に乗り出した都と3市の協議会で配られたA4判の紙には、組合が作成した五つの分割案の一つが示されていた。
 「地形が悪すぎる。これを持ち帰ったら袋だたきだ」。中島信一・府中市副市長は天を仰いだ。等面積ではあるが、府中分は、中央部と西側で不整形な「L字形」。だが、昨年2月からの協議の末、都が示した「あっせん案」が結局、組合の最終案になった。小金井としては、跡地売却を否定していない府中分を合わせれば、「コンパクトな焼却場なら建ち、首の皮1枚つながった」(小金井市議)という。
 「小金井のごみの行き場がなくなる事態は何としても避けなければならない」と、都の梅村拓洋・多摩振興担当課長は強調する。
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 小金井の迷走は、ごみ量が右肩上がりに増えていた1985年に始まった。老朽化が進んだ二枚橋処理場の処理量を1日550トン程度に更新する組合の計画が決まったにもかかわらず、排ガスや臭気に悩まされてきた周辺住民の声を受け、小金井市議会が改築と同時に処理場の分散を検討すべき、とする「第2工場論」を一方的に決議したのだ。
 これをきっかけに、3市の関係がこじれ、施設の更新が遅れた末、府中は狛江、稲城市などの多摩川衛生組合に加入、調布も三鷹市などと組み、たもとを分かつ形になった。だが、小金井はパートナー選びなど対策を先送りし、国分寺市への共同処理の申し入れは2004年5月にずれ込んだ。
 そして、07年3月末の二枚橋処理場の廃止に伴い、宙に浮いた小金井の年間約1万9000トンのごみ(当時)は、国分寺など周辺自治体が引き受けたが、小金井が09年2月中に新処理場の建設地を確保するとの約束を守れず、延期した「09年度中」の期限も実現できるか、不安視されている。
 国分寺市の大沢康雄・清掃施設担当課長は「一緒にやれるか判断するリミットは迫っている」と言う。小金井のごみ行政は正念場を迎えている。
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「丁寧に説明を」
 二枚橋のように、建て替えが難航しているのは立川市のケースだ。処理場周辺の自治会と焼却炉を増やさないと約束したにもかかわらず、日量100トンの炉を追加。93年前後には2008年末までに移転する協定を結んだが、他に適地を確保できず、めどはたたない。
 今後、順次建て替えが予定されている23区内で目立ったトラブルはないというが、焼却場を管理運営している東京二十三区清掃一部事務組合施設建設部の安井龍治・計画推進課長は「『迷惑施設』とも言われるだけに、地元に場所の選定理由を丁寧に説明し、完成後も環境への影響を示すデータを示したり、意見交換を密にしたりする姿勢が不可欠」と指摘する。
(2010年1月26日 読売新聞)

自前処理場 小金井の難題 : ごみ漂流 : 企画・連載 : 東京23区 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

域内処理から支え合いへ
 今年の仕事始めの1月4日朝。小金井市庁舎の庁内放送で稲葉孝彦市長の年頭あいさつが流れた。
 「市民生活に支障を来すことなく、燃やすごみの処理ができているのは関係自治体や処理施設周辺の方々のおかげです」
 小金井など3市のごみ焼却にあたってきた二枚橋処理場が廃止された2007年4月から、行き場を失った小金井のごみは、周辺自治体が「広域支援」の枠組みで受け入れ、処理してきた。「感謝の言葉」は小金井の置かれた苦しい立場の裏返しにほかならない。
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 09年度の受け入れ先は、今後の新たなパートナーとして、ごみの共同処理を目指す国分寺市、八王子市、昭島市、日野市、三鷹市多摩川衛生組合の6団体で総量は約1万4000トンに上る見通しだ。多摩地区(30市町村)では三つに分かれた各ブロック内での支援が基本だが、今回のように、「何年にもわたり全域に及ぶ支援体制は例がない」(都市長会)という。
 ごみ処理場は、計画、住民への説明、環境アセスメント(影響評価)などを含めると、稼働までに9〜10年かかるとされるが、小金井の場合、その前段の建設地決定にも至っていない。
 「他市のごみを運び込まれる地元住民の反発は強い。先行きが見通せない状態でずるずるお付き合いはできない、というのが本音」と、ある自治体のごみ処理担当課長は打ち明ける。
 実際に、小金井市が、国分寺に示した当初のスケジュール案で建設地決定の期限としていた09年2月中の断念を表明すると、東村山市、柳泉園組合など4団体は4月からは受け入れを打ち切った。
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 小金井のごみ処理が滞る危機もささやかれた時、「放置できない」と動いたのは、都市長会会長の黒須隆一・八王子市長だ。「人道的支援」として、ごみの受け入れ表明に続き、5月に開かれた都市長会の全体会では、小金井のようなケースも支援対象に含める申し合わせの策定に道筋を付けた。
 多摩地区では今後10年でごみ焼却場18か所のうち13か所が建て替えの目安とされる「完成後25年以上」を迎える。「住民理解などに時間がかかり、予定通り計画が進まないケースはどこでも起こりうる。困った時はお互い様で、柔軟に対応しなければやっていけない」と黒須市長は言う。
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 一方、都内で複数の自治体が共同でごみを焼却処理する一部事務組合は、先の多摩川、柳泉園など7団体を数える。このうち、23区では2000年に発足した「東京二十三区清掃一部事務組合」が全21処理場の管理・運営にあたり、処理場建設が困難な千代田、新宿など5区は、区外の工場でごみを焼却している。ごみ行政は、街から出たごみは、その街で処理する「自区域内処理」が原則だ。しかし、都廃棄物対策部の担当者は言う。「都市化が進み、原則は崩れてきた。ごみの総量も見据えながら、相互扶助で自治体間の関係を地道に築いていく時代が来ている」
(2010年1月27日 読売新聞)

域内処理から支え合いへ : ごみ漂流 : 企画・連載 : 東京23区 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

堆肥化、炭素化でエコ処理
【写真】12種類の微生物が投入され、生ごみを分解処理する「菌床」。重機で1日6時間かくはんする(久喜宮代衛生組合で)
 東北道・久喜インターに近い埼玉県宮代町。久喜宮代衛生組合のごみ処理場内の倉庫に、黒っぽい木くずが2メートル近い高さまで積まれていた。放線菌など12種類の微生物が投入された240立方メートルの「菌床」だ。
 生ごみを投入すると、24時間で9割以上が二酸化炭素と水に分解処理され、姿を消す。ガスは大気へ。水も大半が発酵熱で蒸発。残りは堆肥(たいひ)になるのだという。
 「心配していた臭気もほとんどない。そんなに場所もとらない」。昨年12月、同組合を視察した小金井市ごみゼロ化推進会議の加藤了教(のりみち) さん(69)は満足そうだった。
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 小金井市可燃ごみの処理を周辺自治体に頼っている状況を受け、加藤さんら市民の有志が新しい処理方式などを探り、注目したのは、ダイオキシン類など有害ガスの出ない「非焼却」方式だった。
 小金井と同規模の人口約10万5000人を抱える同組合はモデル地区(約1万世帯)で可燃ごみから生ごみを分別回収し、「菌床」のシステムで年間800トン前後を処理する。業者への委託費は年間約1200万円で1トンあたり約1万5000円。焼却方式の半分で済むという。
 「環境に配慮し、ごみ焼却を少しでも減らしたかった」と組合の担当者は言う。ただ、この施設規模で処理できるのは小金井の可燃ごみ(2008年度約1万6000トン)の5%分だけだ。
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 煙突のない非焼却方式を追い、沖縄県中部のうるま市へ昨年10月に飛んだのは、斎藤康夫さん(54)ら小金井市議8人。工業団地の一角約1500平方メートルで、ごみを1日100トン処理できる「炭素化装置」のプラント建設が進んでいた。
【写真】「炭素化装置」のテスト用プラント(EEN提供)
 業者によると、窒素を充填(じゅうてん)した熱分解炉を電気で450度に加熱すると、ごみは二酸化炭素ダイオキシン類をほとんど出さず、土壌改良材などに使える炭素に姿を変え、プラスチックは油として再資源化できるという。焼却場の移転計画が難航している立川市が2月から、1日7〜10トンの廃プラスチックの処理に向け、実験を始める。
 「炭素化や、生ごみの堆肥化を組み合わせてもいいのでは」。ごみのメタンガス化や合成油化など全国の非焼却施設を研究してきた加藤さんの提案だ。
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 小金井市は、建設を目指す新処理場の方式について「焼却が基本」(稲葉孝彦市長)と繰り返す。「リサイクルを進めたうえで焼却し、熱エネルギーを回収する方策が現状ではベスト。衛生的で処理量も安定している」(東京二十三区清掃一部事務組合)といった「焼却支持」が多いのが現状だ。しかし、焼却による排ガスなどへの反発は根強い。まだ実績の乏しい非焼却方式も、処理場建設にあたっては、環境、コスト、ごみ減量などの観点から、検討テーマに浮上してくるのは間違いない。
(2010年1月28日 読売新聞)

堆肥化、炭素化でエコ処理 : ごみ漂流 : 企画・連載 : 東京23区 : 地域 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

減量化住民の意識次第
【写真】マンションのベランダで生ごみを乾燥させる野村さん(小金井市で)
 「ぱりぱりして、せんべいみたいでしょ」
 JR中央線の東小金井駅に近いマンション5階のベランダ。主婦の野村睦子さん(55)が、日干しにした生ごみを手にとった。
 ミカンやバナナの皮、サバの骨、キャベツの芯……。キッチンばさみで細かく切ったり手でちぎったりして、バーベキュー用の網にはった新聞紙の上に広げ、防虫対策の洗濯ネットで覆ってから物干しざおにつるす。
 「日干しの道具は100円ショップで調達したものばかり。ポイントは水切りをしっかりして早く乾かし、臭気を出さないこと」。好天なら2〜3日で重さが4分の1以下になり、市の回収拠点で堆肥(たいひ)の原料として引き取ってもらう。紙類も、ケーキなどの箱はよく洗い、乾かしてから雑紙としてリサイクルへ回す。結局、夫(58)と2人で1日に出す可燃ごみは、ちり紙や油をふき取ったぼろ布など30グラム前後。2008年度の多摩地区の平均(1人あたり548・1グラム)の36分の1、多摩では最少の小金井の平均(同388・1グラム)と比べても、25分の1だ。
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 野村さんが減量化を意識しはじめたのは、小金井市可燃ごみの全量処理を周辺自治体に頼ることになった2007年から。「ごみ非常事態宣言」を出した市は、可燃ごみの10%減量を目指し、1日1人50グラム(卵1個分)減の目標を掲げた。「ごみを運び込まれる施設周辺の人たちの気持ちを考え、自分たちに出来ることをしなければ」と野村さん。
 小金井市では、生ごみを乾燥化させる家庭用処理機器の普及も進み、08年度の可燃ごみ量(1万6084トン)は、04年度(2万693トン)比で約22%にあたる約4600トン減った。全国的には、紙やプラスチックなどで分別品目を7から15に増やした横浜市では、焼却ごみの量(08年度)が01年度比41%減に。人口約2000人と小規模だが、徳島県上勝町のように分別品目を34も設け、再利用、再資源化を進めることで、20年までに焼却、埋め立て処分ゼロを目指す自治体もある。「分ければ資源、混ぜればごみ。減量化の成否は住民の意識にかかっている」。東村山市に住むごみ環境ジャーナリストの青木泰さんは話す。
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 分別とともに、広がっているのがごみの有料化だ。都や東京市町村自治調査会によると、都内では八王子、武蔵野、小金井、西東京、多摩など21市町がすでに有料化に踏み切っており、府中市は2月2日から開始する予定。23区では中野区が検討中だが、導入したところはないという。
 有料化には「税金の二重取り」といった批判も強いが、寄本勝美・早稲田大教授(地方自治)は「森林保全や、災害時の避難場所に使えるグラウンドの整備など、市民でごみの手数料の使い道を話し合ったらどうか。市民の参加意識が高まり、減量以上の効果を生むだろう」と指摘する。ごみに向き合う市民の姿勢が問われている。
(2010年1月29日 読売新聞)

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終着地の負担念頭に
【写真】23区のごみが行き着く先の「新海面処分場」(都港湾局提供)
【写真】多摩の25市1町のごみが埋め立てられる二ツ塚廃棄物広域処分場。奥にたっているのは焼却灰をセメント化する施設
 標高300メートル。JR青梅駅から南へ4キロの山あいに、10トンダンプが1日約30台、焼却灰などを満載して入ってくる。
 東京ドーム13個分の59・1ヘクタールに広がる、日の出町の二ツ塚廃棄物広域処分場。多摩地区の25市1町(人口約400万人)から出たごみが、30か所のごみ処理場を経て、行き着く先だ。
 斜面を切り崩した埋め立て地に運ばれるのは、破砕した金属や陶器など不燃物のくずだけ。8割を占める焼却灰は2006年7月から、敷地内の工場ですべてセメント原料として再利用されるようになった。
 「すでに半分近くが埋まり、処分場の『延命策』をひねり出す必要性に迫られた」。処分場を管理運営する東京たま広域資源循環組合の横山正・管理センター長は説明する。
 埋め立て処分量(08年度)は、セメント化が始まる前の05年度(約10・2万トン)比で4%(約4100トン)にまで激減し、当初、14年までの16年間とされた「寿命」は30年間以上に延びた。
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 一方、23区(人口約870万人)のごみの行き先は、お台場から沖の方へ6キロの中央防波堤外側埋立処分場と、新海面処分場だ。
 東京二十三区清掃一部事務組合が運営する24か所のごみ処理場などから来た焼却灰や不燃物のくずの処分量(08年度)は45・7万トン。焼却灰を高温で融解し、固形物(スラグ)にすることで容積を半減させたり、これまで埋め立てていたプラスチック類の一部を焼却に回したりして05年度(83・1万トン)の55%に減った。新海面処分場だけで埋め立て容量は3300万立方メートル以上残り、「50年以上持つ」(都環境局)という。
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 当面の受け入れに心配はないとはいえ、最終処分場は、雨水でしみ出す汚染物質の処理をはじめ、周辺の水質、大気、土壌などの監視が数十年単位で必要になり、都市化が進んだ都内で二ツ塚や新海面は「最後の処分場」と言われる。
 日の出町の谷戸沢処分場(98年埋め立て完了)近くに建設された二ツ塚のケースでは、反対派の住民らが工事阻止のため、土地の一部を共同所有し、行政代執行による強制収用にまで至った。新海面も、都の建設提案に対し、地元の江東区が「断固反対」から了承に姿勢を転じるまでに6年を要した。
 「搬入による交通渋滞や、環境への影響の心配もあったが、どこかが受け入れなければならなかった。もう『次の場所』はないことを認識し、ごみをなるべく出さないライフスタイルを考えて欲しい」と、小川和久・江東区清掃リサイクル課長は訴える。
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 高度成長からバブル期にかけて急増した都内のごみは、不況もあって、この10年で12%減の491万トンに。リサイクル率も23区で18%、多摩地区では36%まで上がっているが、「Reduce(発生抑制)」「Reuse(再使用)」「Recycle(再生利用)」の3Rはまだまだ必要だ。ごみの受け皿は決して無尽蔵ではない。対策を怠り、将来に「ツケ」を回すようなことがあってはならない。
 (おわり。この連載は広中正則が担当しました)
(2010年1月30日 読売新聞)

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