住民投票の成立要件

引き続き、上田道明さんの『自治を問う住民投票』を参照しながら。

自治を問う住民投票―抵抗型から自治型の運動へ

自治を問う住民投票―抵抗型から自治型の運動へ

上田さんは、最終的に、ありうべき住民投票の制度化の条件を以下のように示している。(わたしによる要約)

  • 住民発議には高めの要件をもうける。(一例として有権者の三分の一という例を挙げている。)
  • 必要な署名が達成されれば議会の承認を要さずに実施する。
  • 拘束型ではなく諮問型に。

これらの条件は、いずれも、より踏み込んだ説明とともに示されているので、この要約が一人歩きしてはならないが、住民投票の乱発は望ましくないということ、住民投票を通じて、その地域における「熟慮」が高まるべきことを求めている。
要は「代表民主政が充分に機能すること」が目的であり、住民投票そのものが目的ではない、ということが言われているように思う。

今回の新条例について、「全国的にも希少な条例」(斉藤康夫市議)、「全国的にも大変先進的な制度」(青木ひかる市議)、「全国トップレベルの内容、都内初の制度」(漢人あきこ市議)と、もともと積極的だった市議たちは軒並み手放しで喜んでいる感じである(むろん「13%」という要件には満足していないが、成立したことはともあれ好ましい、と)。

しかし、上記の上田さんの要件からすると、13%というハードルはむしろ低く感じられないか。
小金井市における市民投票推進派からすれば、現在の小金井では13%でも集めるのがたいへんだから、ハードルを上げるのは望ましくないだろうが、たとえば実際、10%または13%程度の有権者しか投票を求めていないような論点を、住民投票にかけるべきなのか、というのは一概に言えない。
住民投票の「成立要件が低いこと」は、イコール「先進的」「トップレベル」であるとは言えまい。ただ、議会に否決権がないのは、住民投票の存在意義のためにも必要であると思う。

他方、今回の新条例において、住民投票の結果「有権者の1/3以上の票を集めた選択肢は市長・市議会によって尊重される」としているのは、成立要件とは別の段階において、民意のありかを厳しく測ろうというハードルだろう。

成立要件を高くするか、結果の有効性の基準を高くするか、どちらが(小金井市にとって)望ましいのかは、もっと考えてみたいと思う。